NO MORE 映画マウンティング

主に新作映画について書きます。

ACT UPの教訓 『BPM ビート・パー・ミニット』感想

試写会当選したんで公開より一足先に観て参りました。カンヌのグランプリをはじめ世界の賞を総ナメにしたフランス映画『BPM ビート・パー・ミニット』。
 
 啓蒙的なメッセージを込めようと思えばいくらでもできそうな題材。
 
「オーラルセックスを含む性交渉の際は必ずコンドームをつけること」
「注射針は必ず交換すること」
 
確かに、本作を通して軽視することのできない歴史を学ぶことができるし、衛生観念を改めることもできるだろう。
 だけど、決してこの映画は観客をわかりやすい教訓へと導いてくれない。
 
 あらすじはこんな感じ。
1990年代初頭のパリ。AIDSが猛威をふるうなか、行政や製薬会社の不作為、世論の無知、差別、偏見に立ち向かった活動団体ACT UP Paris。HIV陽性のショーン(ナウエル・ペレーズビスカヤート)、ショーンと恋に落ちるナタン(アルノー・ヴァロワ)を中心に、ソフィー(アデル・エネル)やチボー(アントワン・ライナルツ)など立場や感が方は違えど、みんな同じ理想に向かってACT UPの活動に心血を注ぐ。
 
 
 
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やっぱり広瀬すずが好き『ちはやふる 結び』感想

青春映画の新たな金字塔として大ヒットした『ちはやふる』の二部作。後編の公開初日に本作の製作が発表される。

もうこのキャストでまた映画が観れるのならなんでもいい。それで満足。正直なところかなり無理した作りになってるし、そのあたりについても書いたが、またみんなに会えたからなんでもいいや、という気持ち

 

本作の前日譚を描く『ちはやふる 繋ぐ』は未見。これから観る。

 

chihayafuru-movie.com

 

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ピクサーの夜/アニメーションの最先端 『リメンバー・ミー』感想 

アメリカの夜』という映画をご存じだろうか。フランスのヌーヴェルヴァーグを牽引したフランソワ・トリュフォーがアメリカ映画に愛を贈った作品だ。タイトルの「アメリカの夜」はフィルムを加工して昼に撮影したシーンを夜に見せる手法の通称。カメラの感度が低く夜に撮影できなった時代に生まれた一種の特殊効果のことだ。

 

スマホですらきれいに夜景を撮れる現在、もはや映画に「アメリカの夜」は存在しない。しかし、特殊効果によって作られた夜は存在する。『リメンバー・ミー』で描かれる「メキシコの夜」はまさにその最先端だった。

 

ピクサーがはじめて挑むミュージカル映画。舞台はメキシコ。テーマは死。

主人公のミゲルは、町の英雄的ミュージシャン、デラクルスに憧れてミュージシャンを夢みるも、家族は代々伝わる音楽嫌い。それでも夢を諦められないミゲルは、メキシコの国民的行事「死者の日」に開催される音楽コンテストへの出場を決意する。しかし、当日に家族にばれてしまい、祖母にギターを壊されてしまう。

ミゲルは泣きながら家を飛び出す。そしてコンテストに出場するため、デラクルスの祭壇に飾ってある彼のギターを盗み出したその時、彼の身に異変が起こる。「死者の日」に死人の所有物を盗んだ彼は「死者の国」の住人になってしまった。

 

www.disney.co.jp

 

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原作読者もだまされる大胆な脚色 『去年の冬、きみと別れ』感想

 
映画のオチや展開が読めたかどうかで頭の良さを競う人たちっていますよね?
 
ぼくは頭が悪いのでその手の人たちは苦手です。だから『メメント』とか『バタフライ・エフェクト』とか『ファイトクラブ』とかの複雑なストーリーを売りにする映画もあまり好きではないです。むしろこてこてのストーリーの方が好きなくらいで。
 
本作はそういった頭の良い人たちへ挑戦状を叩きつけるような映画として宣伝されていたので、正直どうかなと思いながら観にいったんですが、
 
 
やっぱりおもしろいっすね。こういう映画。
 
 
あっさり騙されましたわ。逆に清々しいくらい騙されましたわ。
 
もともと中村文則の同名原作小説がとてもよく出来ているのですが、叙述トリックが小説独自の手法なんですね。だから映像化不可能と言われていたのですが、執念の脚色で見事に実写化。
 
原作の読者も騙されること間違いなし。読んでから観てもよし、観てから読んでもよし。メディアミックスはかくあるべし、というお手本のような映画になっています。
脚本命の映画なので小説と比較しながらその辺について書いていきます。
 
映画と小説両方ともネタバレするのでお気をつけて。
 
あらすじ
フリーライターの耶雲恭介(岩田剛典)は、盲目の美少女(土村芳)が焼け死んでしまった不可解な事件の謎を追う。婚約者の松田百合子(山本美月)との結婚を控えた最後の大仕事として意気ごむ耶雲だったが、容疑者の木原坂雄大斎藤工)の取材を重ねるうちに、木原坂とその姉朱里(浅見れいな)の過去に隠された真実に迫ってしまい、百合子、そして編集者の小林良樹(北村一輝)まで巻き込む事態へと発展することに。果たして焼死事件の真相とは。
 
監督 瀧本智行
原作 中村文則
脚本 大石哲也
製作 総指揮高橋雅美
製作 池田宏之
 
 
 

原作と比べてどうだったか 『坂道のアポロン』感想

原作は青春ジャズマンガの傑作『坂道のアポロン』(小玉ユキ)。

1960年代の長崎県佐世保を舞台に、家庭の事情で横須賀から転校してきた主人公、西見薫(知念侑李)と学校のはみ出し者、川渕千太郎(中川大志)、そしてその幼なじみでクラスの優等生、迎律子(小松菜奈)の友情を描く。
 
 
原作が人気なので、そのエッセンスをどれだけ掬い取りつつ映画の尺に落とし込めるか、が課題の映画。あとはなんといっても映画にはマンガと違って音楽があるのでそこの強みがどれだけ出ているか、というのも見どころでしょう。
 
いきなりばんばんネタバレしていきます。よろしくお願いします。
 
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神さまは機械仕掛け 本人たちによる実録実演実話『15時17分、パリ行き』感想

ここ最近もっぱら実話ばかり撮っているクリント・イーストウッド。今回は2015年に起きたタリス銃乱射事件の映画化だ。タイトルにある通り、15時17分、パリ行きの列車、タリス号車内で起きたテロ事件。

 
テロリストは300発の銃弾を準備し、テロに臨んだが、勇気ある乗客たちの果敢な抵抗により、乗客全員の命が救われた。この勇気ある乗客たちが本作の主人公たちであるスペンサー、アレク、アンソニーの3人。
 
本作が今までの実話作品と一線を画すのは、事件の当事者たちをそのまま本人役として起用するという業界激震のキャスティング。もちろん彼らは演技経験なしの素人だ。
 
「映画で実話を描くこと」、「映画における演技とは」など映画という表現そのものの在り方を問うような作品。ただまず言っておかなきゃならないのが、
 
この映画が圧倒的に面白い
 
ということ。
これはとても大事なことだ。なお本記事はネタバレありでお送りします。

 

wwws.warnerbros.co.jp

 
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スモール・イズ・ビューティフル 『ダウンサイズ』感想

人間が小さくなると社会はどうなるのだろう。ファンタジーではなく、この発想を現実的にアプローチした映画。まるで政治哲学の思考実験のようなテーマだが、内容はとってもコミカル。

 

主人公ポール(マット・デイモン)は、理学療法士オマハの実家で妻オードリー(クリステン・ウィグ)と二人慎ましく暮らしているが、それでも家計は厳しい。深夜にこっそりベッドを脱けだし、そろばんをはじく毎日。憧れのマイホーム購入も住宅ローンの審査が通らない。夢の生活を実現させる方法はただひとつ。世紀の大発明、ダウンサイズによって体の大きさを1/14にすること。体が小さくなれば、食費などの生活コスト必然的に削減できる。つまり、資産が82倍になる計算だ。

ダウンサイズした住人の町、レジャーランドの門を叩くポールとオードリー。はたして二人を待ち受ける運命とは。

未見の方に配慮しませんのでネタバレにはご注意を。

 

downsize.jp

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