神さまは機械仕掛け 本人たちによる実録実演実話『15時17分、パリ行き』感想
ここ最近もっぱら実話ばかり撮っているクリント・イーストウッド。今回は2015年に起きたタリス銃乱射事件の映画化だ。タイトルにある通り、15時17分、パリ行きの列車、タリス号車内で起きたテロ事件。
テロリストは300発の銃弾を準備し、テロに臨んだが、勇気ある乗客たちの果敢な抵抗により、乗客全員の命が救われた。この勇気ある乗客たちが本作の主人公たちであるスペンサー、アレク、アンソニーの3人。
本作が今までの実話作品と一線を画すのは、事件の当事者たちをそのまま本人役として起用するという業界激震のキャスティング。もちろん彼らは演技経験なしの素人だ。
「映画で実話を描くこと」、「映画における演技とは」など映画という表現そのものの在り方を問うような作品。ただまず言っておかなきゃならないのが、
この映画が圧倒的に面白い
ということ。
これはとても大事なことだ。なお本記事はネタバレありでお送りします。
スモール・イズ・ビューティフル 『ダウンサイズ』感想
人間が小さくなると社会はどうなるのだろう。ファンタジーではなく、この発想を現実的にアプローチした映画。まるで政治哲学の思考実験のようなテーマだが、内容はとってもコミカル。
主人公ポール(マット・デイモン)は、理学療法士。オマハの実家で妻オードリー(クリステン・ウィグ)と二人慎ましく暮らしているが、それでも家計は厳しい。深夜にこっそりベッドを脱けだし、そろばんをはじく毎日。憧れのマイホーム購入も住宅ローンの審査が通らない。夢の生活を実現させる方法はただひとつ。世紀の大発明、ダウンサイズによって体の大きさを1/14にすること。体が小さくなれば、食費などの生活コスト必然的に削減できる。つまり、資産が82倍になる計算だ。
ダウンサイズした住人の町、レジャーランドの門を叩くポールとオードリー。はたして二人を待ち受ける運命とは。
未見の方に配慮しませんのでネタバレにはご注意を。
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R指定の再帰的ファンタジー 『シェイプ・オブ・ウォーター』感想
異類婚姻譚でも古典中の古典ともいえる物語はアンデルセン童話の『人魚姫』ではないだろうか。人間の王子に恋をした人魚が、声と引き換えに尾ひれを足に変えてもらい、王子と結ばれるべく人間界に降りたつ悲しいロマンス。
本作の主人公、イライザ(サリー・ホーキンス)も声を発することができない。彼女の人生を変えたのは、人魚とは程遠いある水棲生物との出会いだ。1962年、冷戦下のアメリカ。童話とは似つかわしくないこのきな臭い時代を舞台に『人魚姫』の物語が思いもよらぬ形でよみがえる。
あらすじ書くのめんどうなので適当に公式サイトでチェックしてください。ただ予備知識なしで見たほうが面白い映画なので自己責任でお願いします。ネタバレありです。モロにラストに触れます。
ソフィア・コッポラは何がしたかったのか 『ビガイルド/欲望のめざめ』感想
ソフィア・コッポラの新作。今までの彼女の監督作はすべて自身が書いたオリジナル脚本になるので、原作ありの企画は本作が初。それもすでに一度ハリウッドで実写化されている小説を題材にしたリメイク作品になるのでちょっとびっくりした。オリジナルはドン・シーゲル監督、クリント・イーストウッド主演の『白い肌の異常な夜』。さて『ダーティハリー』でよく知られるハリウッドで一番男臭いコンビの映画をなぜ今さらガーリーでポップな作風で知られるソフィア・コッポラがリメイクするのだろうか。
ここでは『白い肌の異常な夜』との違いなども含めて、リメイク版の感想を書いていく。以下ではタイピングがだるいので『白い肌の異常な夜』をシーゲル版、『ビガイルド/欲望のめざめ』をコッポラ版と呼ぶ。ネタバレがんがんするので未見の方は要注意で。
ドン・シーゲル&クリント・イーストウッド 『白い肌の異常な夜』感想
男臭いいぶし銀コンビ、ドン・シーゲル&クリント・イーストウッドの傑作サスペンス・スリラー『白い肌の異常な夜』。
お洒落でガーリーなソフィア・コッポラが本作をリメイクするっていうんで予習がてらにレンタルしてきましたよ。久々にリアル店舗で。ちょっと面倒だけど、観たい方は某大手レンタル店へ。近所の小規模店でも在庫していたのでだいたいの店に置いてあると思う。
1971年に公開された本作は、監督のドン・シーゲルとクリント・イーストウッドにとってキャリアの転機となった作品。
そもそもこの企画は『真昼の決闘』撮影時にイーストウッドが原作を気に入り、シーゲルに映画化を持ちかけたところからスタートしたらしい。
「This is me」めっちゃいい 『グレイテスト・ショーマン』感想
ひと昔前まで「終わったジャンル」感を醸し出していたミュージカル映画がここ最近猛烈な盛り上がりを見せている。
ミュージカル映画リバイバルに関わったキャスト、スタッフが結集して制作されたのが本作『グレイテスト・ショーマン』だ。個人的にはミュージカルにはそこまで思い入れはないんだけど、頭でっかちの映画オタクからなぜか下に見られることが多いので肩入れしたくなる。まあ本作はそんなこと抜きにしても傑作だけど。
核心には触れてないけどネタバレ気になる方は読まないでください。