NO MORE 映画マウンティング

主に新作映画について書きます。

『パラサイト 半地下の家族』評について思うこと 

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED ポン・ジュノは好きな映画監督だ。『パラサイト』は上映を心待ちにしていた映画で、「絶対公開初日に観に行くぞ」と意気込んでいたけど、生来の出不精から劇場上映はスルーしてしまった。その…

東映vs.アウトレイジ抗争 『孤狼の血』感想

『孤独の血』を公開初日に観てきた。「『アウトレイジ』に対する東映の答えですね」。予告編に使われている古舘伊知郎の推薦コメントだが、近年稀にみる出色の宣伝文句だ。「 日本映画史を塗り替える」と銘打たれたヤクザと警察の物語に東映の本気を期待した…

サノスさんとトロッコ問題 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』感想

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を観てきた。異次元1on1とかスーパーヒーローの無双感とかは薄めだけど、まあとにかく豪華メンツが一堂に会して前近代的な白兵戦でぶつかり合うところはテンションあがったな。やっぱり広野で対峙する両軍が喚声…

鎧塚みぞれは何のシャンプーを使ってるのか 『リズと青い鳥』感想

「日常系アニメ」の究極進化形をまざまざと見せつける驚異的アニメーション。バカみたいな感想だけど、やっぱりアニメーションがきれいだった。アニメの登場人物に「この人何のシャンプー使ってるんだろう」と思ったのは初めての経験で、自分気持ち悪いなと…

ACT UPの教訓 『BPM ビート・パー・ミニット』感想

試写会当選したんで公開より一足先に観て参りました。カンヌのグランプリをはじめ世界の賞を総ナメにしたフランス映画『BPM ビート・パー・ミニット』。 啓蒙的なメッセージを込めようと思えばいくらでもできそうな題材。 「オーラルセックスを含む性交渉の…

やっぱり広瀬すずが好き『ちはやふる 結び』感想

青春映画の新たな金字塔として大ヒットした『ちはやふる』の二部作。後編の公開初日に本作の製作が発表される。 もうこのキャストでまた映画が観れるのならなんでもいい。それで満足。正直なところかなり無理した作りになってるし、そのあたりについても書い…

ピクサーの夜/アニメーションの最先端 『リメンバー・ミー』感想 

『アメリカの夜』という映画をご存じだろうか。フランスのヌーヴェルヴァーグを牽引したフランソワ・トリュフォーがアメリカ映画に愛を贈った作品だ。タイトルの「アメリカの夜」はフィルムを加工して昼に撮影したシーンを夜に見せる手法の通称。カメラの感…

原作読者もだまされる大胆な脚色 『去年の冬、きみと別れ』感想

映画のオチや展開が読めたかどうかで頭の良さを競う人たちっていますよね? ぼくは頭が悪いのでその手の人たちは苦手です。だから『メメント』とか『バタフライ・エフェクト』とか『ファイトクラブ』とかの複雑なストーリーを売りにする映画もあまり好きでは…

原作と比べてどうだったか 『坂道のアポロン』感想

原作は青春ジャズマンガの傑作『坂道のアポロン』(小玉ユキ)。 1960年代の長崎県佐世保を舞台に、家庭の事情で横須賀から転校してきた主人公、西見薫(知念侑李)と学校のはみ出し者、川渕千太郎(中川大志)、そしてその幼なじみでクラスの優等生、迎律子…

神さまは機械仕掛け 本人たちによる実録実演実話『15時17分、パリ行き』感想

ここ最近もっぱら実話ばかり撮っているクリント・イーストウッド。今回は2015年に起きたタリス銃乱射事件の映画化だ。タイトルにある通り、15時17分、パリ行きの列車、タリス号車内で起きたテロ事件。 テロリストは300発の銃弾を準備し、テロに臨んだが、勇…

スモール・イズ・ビューティフル 『ダウンサイズ』感想

人間が小さくなると社会はどうなるのだろう。ファンタジーではなく、この発想を現実的にアプローチした映画。まるで政治哲学の思考実験のようなテーマだが、内容はとってもコミカル。 主人公ポール(マット・デイモン)は、理学療法士。オマハの実家で妻オー…

R指定の再帰的ファンタジー 『シェイプ・オブ・ウォーター』感想

美女と野獣、かえるの王さま、シザーハンズ、ナウシカと王蟲、王とコムギなど、異形のものと人間のロマンス、ないし交流を描いた作品はたくさんある。いわゆる異類婚姻譚というやつだ。 異類婚姻譚でも古典中の古典ともいえる物語はアンデルセン童話の『人魚…

ソフィア・コッポラは何がしたかったのか 『ビガイルド/欲望のめざめ』感想

ソフィア・コッポラの新作。今までの彼女の監督作はすべて自身が書いたオリジナル脚本になるので、原作ありの企画は本作が初。それもすでに一度ハリウッドで実写化されている小説を題材にしたリメイク作品になるのでちょっとびっくりした。オリジナルはドン…

ドン・シーゲル&クリント・イーストウッド 『白い肌の異常な夜』感想

男臭いいぶし銀コンビ、ドン・シーゲル&クリント・イーストウッドの傑作サスペンス・スリラー『白い肌の異常な夜』。 お洒落でガーリーなソフィア・コッポラが本作をリメイクするっていうんで予習がてらにレンタルしてきましたよ。久々にリアル店舗で。ちょ…

「This is me」めっちゃいい 『グレイテスト・ショーマン』感想

ひと昔前まで「終わったジャンル」感を醸し出していたミュージカル映画がここ最近猛烈な盛り上がりを見せている。 ミュージカル映画リバイバルとすら呼べそうな盛り上がりは『シカゴ』そして『ドリームガールズ』あたりからだろうか。 ここ最近では『レ・ミ…

アクションの癖がすごい 『悪女/AKUJO』感想

ブルース・リーやジャッキー・チェン、ドニー・イェンのように超人的な身体能力とスキルで魅せる軽量級アクションや、アーノルド・シュワルツェネッガーやシルベスター・スタローンのようなゴリゴリのマッチョがパワフルに魅せる重量級アクションは、役者の…

「演技力」の曖昧さについて

久々の更新にもかかわらず大きなテーマを掲げてしまい後悔している。 ともあれ、映画やドラマにおける演技は作品の出来を左右するとっても大事なパフォーマンスである。またそうであるからこそ、便利な批判対象にもなる。 言語化できるほど作品を吟味したわ…

聖人も悪人もいない物語――映画『聲の形』感想

前置き さて毎年恒例の感動ポルノの季節ですね。愛は地球を救う。 というわけで「感動ポルノ」と批判された『声の形』をレビューすることにする。 あらすじはこちらを確認してね。 イントロダクション | 映画『聲の形』公式サイト *1 映画を鑑賞した後マンガ…

東映『仁義なき戦い』シリーズ

「ヤクザ映画の名作」じゃなくて「ヤクザが出てくる名作」なんで毛嫌いしてる人はもったいないよ、というレビュー。 対象作品は以下の四作。 『仁義なき戦い』(1973) 『仁義なき戦い 広島死闘編』(1973) 『仁義なき戦い 代理戦争』(1973) 『仁義なき戦…

R指定にかけた男たち ウルヴァリンシリーズ最終作『ローガン』感想

MCUの大成功でアメコミ映画は親子で観にいく定番ジャンルになった。 今回の『ローガン』はローガン/ウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)と謎の少女ローラ(ダフネ・キーン)の「親子もの」。 20世紀FOXもマーベルに負けじとマーケティングがんばりますな…

在庫僅少本の探し方

本のタイトルで検索するときまって上位はAmazonページ。お目当ての本がAmazonで品切になってるときはどうしてますか?というお話。Amazonで品切=入手不可、と思ってる方けっこう多いんだけど、意外と簡単に手に入るよという話。 こんな木っ端ブログを覗いて…

アニメ版と実写版の比較 ディズニー映画『美女と野獣』感想

異端のディズニープリンセス アニメ版『美女と野獣』 先日『美女と野獣』の実写版を見てきた。「ディズニー攻めてるなー」と思って楽しく鑑賞したけど、アニメ版を見直してみてびっくり。 そもそものアニメ版がめちゃめちゃ攻めてる。実写版の感想だけを書こ…

いきり映画オタクの話

学生時代のレンタルビデオ屋バイトのお話。最低賃金すれすれのくそみたいな時給だったけど、無料で映画やCDをレンタルできたのでけっこう人気のアルバイトだった。 メンバーもバラエティーに富んでて、お笑い芸人の卵(つまんない)、売れないバンドマン(モ…

頭つかって映画観るのしんどくない?『ラ・ラ・ランド』感想(ネタバレあり)

原題 La La Land製作年 2016年製作国 アメリカ配給 ギャガ、ポニーキャニオン 『ラ・ラ・ランド』ふつーにおもしろかった。なにがおもしろかったってミュージカルがよかった。タイトルどおりハイになって楽しめる映画。 正直これしか言いようがないんだが、…