NO MORE 映画マウンティング

主に新作映画について書きます。

やっぱり広瀬すずが好き『ちはやふる 結び』感想

青春映画の新たな金字塔として大ヒットした『ちはやふる』の二部作。後編の公開初日に本作の製作が発表される。

もうこのキャストでまた映画が観れるのならなんでもいい。それで満足。正直なところかなり無理した作りになってるし、そのあたりについても書いたが、またみんなに会えたからなんでもいいや、という気持ち

 

本作の前日譚を描く『ちはやふる 繋ぐ』は未見。これから観る。

 

chihayafuru-movie.com

 

 

とにかく青春

「青春」を演じるという「青春」。ちはやふるシリーズの魅力はこれに尽きる。

広瀬すず(19)

野村周平(24)

新田真剣佑(21)

上白石萌音(20)

矢本悠馬(27)

森永悠希(21)

若く、ポテンシャルの高いキャストが集まることで生まれる競争心と連帯感。かるたのシーンを演じるために敢行される合宿は、もはや本作の撮影が彼らにとって部活であり、青春となり、“青春映画”の空気をつくる

さらに本作から 

優希美青(18)

佐野勇斗(19)

清原果耶(15)

という若い役者たちが加わっている。特にかるた準クイーン我妻伊織を演じた清原果耶は朝ドラ系の正統派女優。脇役ながら圧倒的な透明感と存在感は放っていた。

弱冠15歳ながら広瀬すずと真っ向から対峙するクライマックスシーンは、「あの広瀬すずがもう追われる立場にいるのか」というメタ的な感慨すら湧く堂々とした立ち居振る舞いだった。

またコミカルなシーンも随所に盛り込まれる本作。かるたで培われた新の“感じの良さ”で食い気味に振られてしまう伊織の告白秒殺シーンは複数回繰り返される鉄板の笑いどころでコメディエンヌとしての一面も垣間見える。

 

 

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(C)2018 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀講談社

 

ちなみに新の役どころは、千早への唐突な告白で瑞沢かるた部を壊滅寸前までかき乱し、伊織の告白を秒殺で断りながら藤岡東かるた部への勧誘に成功して全国大会の台風の目になる、など小悪魔っぷりが甚だしい。

もちろん広瀬すずも負けていない。というか彼女の鬼気迫る演技はやっぱり頭ひとつ抜けているように改めて思った。

千早は、作中でも奏に「なんという美人の無駄づかい」とつっこまれているように、天然で自由奔放なキャラクター。しかし、かるたになると圧倒的なパフォーマンスを見せる。この千早がゾーンに入ったときの表情。しばしばスローモーションで映し出されるかるたシーンでもプロのアスリートのような迫真の表情をきちんとキープできていて圧倒される。背景が暗転して札が光る映像演出もけっこう好き。劇伴をなぜ入れるのかはわからないけど。

太一がかるた部を離れて落ちこみながらも全国大会を控えた部員たちの手前、気丈に振る舞う千早。しかし、ふとした瞬間に目に入った畳の「茶道部備品」の文字に太一との思い出がフラッシュバックでよみがえり、涙を我慢することができない。

 

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(C)2018 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀講談社

 

この映画ちょっと劇伴がうるさいのが難点なんだが、広瀬すずのこの泣き演技だけは無音。陰陽ともにしっかり見せ場を作る。

 

東宝の無茶ぶり

上の句の上映時間は111分。下の句が103分。そして結びが128分。予定になかった続編、それも完結編を作るにあたって脚本づくりも難航したんだろうね。無茶ぶりへのうろたえが垣間見えるボリュームアップ。

 

小泉監督

自分としては全部出し切った気持ちだったので、続編が決まったと聞いた時は正直“どうしよう!?”と思いました(笑)

 北島プロデューサー 

フルマラソンを全力で走りきった監督に、もう一度最初から走ってくれと言うようなものでした 

*1

 

ぼくなら逃げ出してしまう。閑話休題。 

普通に考えれば、前編で東京都予選、後編で全国大会を描いた前二作に対して、一作でその両方を描かなければならない結び。

やはり三部作としてみた場合の完成度は高いとはいえない。下の句で千早のライバルとして登場した若宮はほとんど出番なし。何より新の存在感が薄く、伊織とのかけあいの印象しか残らないコメディリリーフ感すらある。まあ、このあたりはないものねだりしてもしょうがないとしよう。

 

一番の不満は、語りがしつこいところ。これがなければもう少し盛りこめた要素があるのでは?と思うくらい。

原田先生(國村準)や奏はストーリーの解説を担うキャラクターだが、「そりゃみればわかるよ」ということをわざわざ言葉で説明しすぎ。 

例えば、全国大会の決勝シーン。机くんこと駒野が負けてしまい、嫌なムードが流れるや否や、新入りメンバーの筑波の一声「札並びました。ここから逆転」で流れが一変する。そこから瑞沢の大逆転がはじまる。言ってしまえばお決まりの展開だ。

テンポよく畳みかけてくれればいいのに、奏の念押し解説をいれてしまう。「いいタイミグ」とか、「仲間の掛け声で身体が軽くなる」とか。

 

本作に限らず邦画のストーリーテリングにありがちだけど、エキストラのざわめきもあまり多用してほしくないところ。ただわかりやすい演出なので使い勝手がいいのはわかる。でも東京都予選の「みんな瑞沢を倒すためにここにきてる」からざわめきが急に聞こえて他校生徒が取り囲むように瑞沢を盗み見てるのはやりすぎだと思った。

 

あと「運命戦は運命戦じゃない」の理論、もったいぶった割に無茶苦茶な理屈で笑う。それだったら「勝つっていう気迫が札を呼び込む」くらいのありきたりな根性論で良かったんじゃないかな。地道な経験で読まれる札がわかるってのはもうオカルトでしょうよ。

 

相変わらずカメラの露出のくせがすごく白飛び気味の映像が気にかかるけど、もう戻れない光輝く青春ってことでいいんじゃないでしょうか。

 

ストーリー自体に関しては無茶ぶりが過ぎるので何も言わない。千早と太一、新の関係を軸にストーリー作らなきゃいけないけど、原作はまだ連載中で結論出せないわけだし、そりゃ歯切れ悪くなるのが当然。着地点があいまいだと脚本練りこみようないと思うし。

 

まとめ

広瀬すずと清原果耶がめっちゃいい。賀来賢人もよかった。キャストはみんないい。でもやっぱり広瀬すずが好き。ぜひご覧あれ。