NO MORE 映画マウンティング

主に新作映画について書きます。

アクションの癖がすごい 『悪女/AKUJO』感想

ブルース・リージャッキー・チェンドニー・イェンのように超人的な身体能力とスキルで魅せる軽量級アクションや、アーノルド・シュワルツェネッガーシルベスター・スタローンのようなゴリゴリのマッチョがパワフルに魅せる重量級アクションは、役者の身体性を最大限に引き出すことで観客を魅了するバスター・キートン型のアクション映画。
 スターウォーズマトリックス、近年のマーベル映画はCGなどの特殊効果を駆使してアトラクション的な映像体験を産み出し、高次元のアクションへと昇華させるタイプのアクション映画。ギミックでアクションを映えさせるという意味ではチャップリン型と呼べる。
 何が言いたいかというと、アクションはシンプルなゆえに歴史が長く、その引き出しは既にほとんど開けられてしまったジャンルである。
 
 
…などといかにもシネフィルっぽい分類ぐせと根拠のない断言でなんとなくアクション映画って下に見られがち。頭使わなくても基本見れますしね。かくいう私もそんなふうに考えていた時期がありました。
 
だがしかし…。クリエーターたちの執念はすごいもので、『レイド』『ハードコア』『ベイビードライバー』『アトミックブロンド』など、21世紀に入り映画の歴史が百年を超えた現在でも、続々と新鮮なアクション映画が作られ続けている。
 
今年も早速とんでもない映画が公開になった。それが本作『悪女/AKUJO』だ。宣伝文句に偽りはなく、間違いなく、今年NO.1の驚くべきアクション映画だった。
 
続きを読む

「演技力」の曖昧さについて

 
久々の更新にもかかわらず大きなテーマを掲げてしまい後悔している。
ともあれ、映画やドラマにおける演技は作品の出来を左右するとっても大事なパフォーマンスである。またそうであるからこそ、便利な批判対象にもなる。
言語化できるほど作品を吟味したわけでもなく、「なんとなく気に入らない」といった感覚で作品を批判したいときに、「〇〇の演技が下手」といえば、内容が薄くてもクリティカルに見える。とっても便利な評価項目なわけだ。
 
というのも演技の上手い下手は、共通認識があるようでいざ文字にしてみるとふわっとしか説明できない曖昧なものだからだ。
考えてみると不思議なもので、演技経験のある日本人は少数派だ。あったとしてもお遊戯会や文化祭の出し物でちょっとした役を演じたことがある程度でしょう。
ましてや専門的な教育や指導を受けたことのある人などほぼ皆無だ。にもかかわらず、映画やドラマが公開されると役者の演技力が当たり前のように品評され、しばしば痛烈な批判が加えられる。
 
というわけで、なんとなーく共有されている演技力ってつまるところどういうことなのか、考えてみようと思う。*1
 

*1:本稿の演技は映画やテレビなどの映像作品に限定する

続きを読む

聖人も悪人もいない物語――映画『聲の形』感想

前置き

さて毎年恒例の感動ポルノの季節ですね。愛は地球を救う。
というわけで「感動ポルノ」と批判された『声の形』をレビューすることにする。
あらすじはこちらを確認してね。
 
映画を鑑賞した後マンガ全巻読破。少し内容がごっちゃになってるかもしれないけどそこはご愛嬌ということで。
本論に入る前に「感動ポルノ」についておさらいしておこう。
 
私たちが障害者の姿に感動しているのは、心のどこかで彼らを見下しているからかもしれません……。2014年12月に亡くなったコメディアン兼ジャーナリストのStella Young(ステラ・ヤング)氏は、従来の「気の毒な障害者」という枠を破った率直な発言で人気を集めました。健常者の感動を呼ぶために障害者を取り上げる風潮を批判し、障害者問題に対する社会の理解を求めました。(TED2014より)

   障害者は感動ポルノとして健常者に消費される - ログミー

 

「感動ポルノ」の名付け親ステラ・ヤング氏のTEDスピーチより引用。詳細はリンク先を参照。

要するに障害者を健常者の都合のいいように消費する一連の風潮のこと。

 

*1:わざわざ公式からひっぱってきたのは、「いじめ」や「聴覚障害」に関する情報が一切出てこないことを確認するためでもある

続きを読む

東映『仁義なき戦い』シリーズ

「ヤクザ映画の名作」じゃなくて「ヤクザが出てくる名作」なんで毛嫌いしてる人はもったいないよ、というレビュー。
 
対象作品は以下の四作。
 
仁義なき戦い』(1973)
仁義なき戦い 広島死闘編』(1973)
 
この後に『仁義なき戦い 完結篇』や番外編シリーズ『新仁義なき戦い』があるけど、笠原和夫脚本の作品が圧倒的におもしろいし、ストーリーとしても四部作でまとまってるのでとりあえず『頂上作戦』までを一区切りとする。*1
 
*なにを持ってネタバレなのかさっぱりわからないので配慮はしません。
 

*1:『完結篇』は制作の直前に起こった抗争をモデルにしてるため、「実録もの」として料理しづらかった部分がでかい。笠原和夫から脚本を受け継いだ高田宏治の手腕のせいとは必ずしもいえない。

続きを読む

R指定にかけた男たち ウルヴァリンシリーズ最終作『ローガン』感想

 
MCUの大成功でアメコミ映画は親子で観にいく定番ジャンルになった。
今回の『ローガン』はローガン/ウルヴァリンヒュー・ジャックマン)と謎の少女ローラ(ダフネ・キーン)の「親子もの」。
 
20世紀FOXもマーベルに負けじとマーケティングがんばりますなあ、などと思っていたら「レーティングあり」ときいてイスから転げおちて、そのままマンションから飛び降りて路上でのたうち回るほど驚いた。
 
なにを血迷ったか20世紀FOX。もうマーベルにXメンの権利売る前提でややけくそになってるのか?と邪推しつつ劇場へ。
 
はい、ごめんなさい。超傑作でした。ありがとう20世紀FOX。ありがとうジェームズ・マンゴールド
 

在庫僅少本の探し方

 
本のタイトルで検索するときまって上位はAmazonページ。お目当ての本がAmazonで品切になってるときはどうしてますか?というお話。Amazonで品切=入手不可、と思ってる方けっこう多いんだけど、意外と簡単に手に入るよという話。 
 
こんな木っ端ブログを覗いてみようなんていう酔狂なみなさんは、市場性の低そうなマニアックな本がどうしても欲しくなる瞬間が定期的に訪れるはず。
たまたまこの前、そんな本にぶちあたって無事に解決したので紹介します。

 

続きを読む

アニメ版と実写版の比較 ディズニー映画『美女と野獣』感想

異端のディズニープリンセス アニメ版『美女と野獣

先日『美女と野獣』の実写版を見てきた。「ディズニー攻めてるなー」と思って楽しく鑑賞したけど、アニメ版を見直してみてびっくり。
 
そもそものアニメ版がめちゃめちゃ攻めてる。実写版の感想だけを書こうとすると、「いやそれアニメ版オリジナルだから」となるので、両者を比較して書くことにする。ちなみにどちらも見ている方前提で書いてるんで、ネタバレ覚悟で読んでくださいね。
 
続きを読む